公正証書による強制執行の手順
公正証書による強制執行の手順
「強制執行認諾条項付き公正証書」に基づき、強制執行により債権を取り立てる
ためには、次の手順が必要です。
①債務者に対する公正証書謄本等の送達及び「公正証書謄本等送達証明書」の入手
②公正証書正本への「執行文の付与」
送達手続き及び送達証明書の交付
①強制執行をするためには、先ず、公証人から債務者に対し公正証書の謄本を
郵送してもらい、書類の内容を知りうる状態にしておくための「送達」という
手続きが必要。
送達は公証人に依頼して行うものであり、当事者間で郵送しても証明にはならず、
必ず公証役場で手続きを行わなければ,「送達証明書」は交付されない。
なお、現在は、公正証書作成の時点で同時に送達手続きを終えておくことが
一般的になっている。
②送達手続きを終えたら,公証人は「執行文付与」を行うことになる。
③公正証書謄本が相手方(債務者)に届いたことを証明する公証人からの
「送達証明書」を受領する。
この「送達証明書」は強制執行手続きにおいて裁判所に提出する必要がある。
執行文の付与
①公正証書の正本を所持している債権者が、公証役場に対し「執行文の付与」を
請求する。なお、管轄を異にする数筆の不動産に強制執行をする場合は、
強制執行する機関の数だけ執行文の付与を受ける必要がある。
②一般的な「単純執行文」の場合、公証人は、公正証書の正本の末尾に
「債権者Aは債務者Bに対し、この証書により強制執行ができる」旨の
文言を付して、その公正証書の正本を債権者に返却する。
また、債務者本人が公証役場に出頭している場合は、その債務者本人に対し
直接に交付送達できるので、この執行文付与申請手続きも同時に行うことが
出来る。
強制執行手続き前の相手方の財産調査
①相手方の何の財産を差し押さえるかは、強制執行を申し立てる人が決めること。
②申立人本人が、相手方にどのような財産があるかを調査し、何を差し押さえるか
を決めて申立書に記入する。
予め相手方の取引銀行名や勤務先名等を調べておくことが必要となる。
相手方に対象となる財産がなければ強制執行の申し立てをしても、
意味のないものになってしまう。
③差し押さえの対象となる預貯金や給料などの債権が現実に存在するかどうか
あるいはその程度を知りたい場合には「第三債務者(取引銀行・勤務先)に
対する陳述催告の申立」をすることができる。
この陳述催告の申立は債権差し押さえ申立てと同時に行うことになる。
裁判所への強制執行申立ての手続き
強制執行の申立には次の書類等が必要となる。
①執行文が付与された公正証書等の債務名義
②執行文
③送達証明書
これらの書類が揃ったら、相手方(債務者)の住所地を管轄する地方裁判所の
執行係に、債権差押え命令申立書(含む当事者目録、請求債権目録、差押債権
目録)を提出。
裁判官に差押命令を発令してもらう。
差押可能な給料の範囲
給料の差押は、法律により、税金や社会保険料の控除後の給料の1/4(給料が
月額44万円超の場合は、33万円を除いた金額)までが差押の対象となる。
但し養育費については給料の1/2まで差押が可能とされている。
この差押可能な金額まで毎月、相手方(債務者)に給料を支払っている会社等
(第三債務者)から債権者に支払われることになる。
給料は、一度差押えれば、それ以降の給料にも毎月差押の効果が継続されて
支払われることになる。
申立て後の流れ
①裁判所に「債権差押命令申立書」等の書類を提出
②裁判所による差押命令
裁判所は、債権差押命令の申立に理由ありと認めるときは、差押命令を
発し、相手方(債務者)及び相手方に給料を支払っている会社(第三債務者)に
債権差押命令の正本を送達する。
③申立人(債権者)への郵送
債務者及び第三債務者に債権差押命令正本を発送した後、申立人に対し、
債権差押命令正本と、陳述催告の申立がある場合は、第三債務者からの
陳述書(回答)を同封して、発送する。
④申立人(債権者)による取り立て
債務者に債権差押命令正本が届いてから1週間経過後、申立人本人が、第三債務者
(債務者に給料を支払っている会社)に取り立てを行うことになる。
※取立て行為そのものには、裁判所は仲介することはありません。
⑤取立て届の提出
取立てをした都度、債権者から裁判所に、取立てた旨の取立届を提出する。