離婚全般
離婚全般
離婚の分類
離婚の方法としては、民法において定める協議離婚・裁判離婚のほかに
家事審判法において定める調停離婚と審判離婚があります。
民法に規定する離婚 | a)協議離婚…当事者の合意による離婚 b)裁判離婚…家庭裁判所の裁判による離婚 |
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家事審判法に規定する離婚 | c)調停離婚…家庭裁判所の調停による離婚 d)審判離婚…家庭裁判所が職権で離婚の審判をする |
①協議上の離婚
夫婦に離婚の意思があり、離婚の合意をして届出をすれば、理由のいかんに
かかわらず、協議上の離婚は成立します。その協議で、一方を未成年の子の
親権者と定めなければならない.
②裁判上の離婚
協議上の離婚が成立しない場合でも、以下の離婚原因がある場合は、
夫婦の一方は、離婚の訴えを提起することができる。
ただし、裁判所は⑴~⑷の事由があるときでも、一切の事情を
考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、
離婚の請求を棄却することができる。
⑴配偶者に不貞な行為があったとき
⑵配偶者から悪意で遺棄されたとき
⑶配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
⑷配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
⑸その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき
夫婦間で離婚の協議が調わないときに、直ちに離婚の訴えを
提起できるわけではなく、その前に家庭裁判所に離婚調停を
申し立てなければならない。(調停前置主義)
調停離婚が成立せず、それに代わる審判離婚も成立しなかったときに、
離婚の訴えを提起できるに過ぎない。
裁判上の離婚の場合には、裁判所は父母の一方を未成年の子の
親権者と定める。
有責配偶者の離婚請求
有責配偶者とは、自ら婚姻関係を破綻させ離婚原因を作った配偶者のこと。
一方配偶者の不貞、暴力や悪意の遺棄(勝手に家を出ていって、生活費も払わない等)
も有責配偶者となる。
こうした、婚姻関係を破綻させる原因を作った配偶者からの離婚請求は認められる
のか。
最高裁判所は昭和27年の判決で、有責配偶者からの離婚請求に対し、「勝手に不貞を
働いた夫からの離婚請求が許されるなら、妻は踏んだり蹴ったりである。」として、
これを否定した。
しかし、その後、既に夫婦関係が破綻して回復不可能なのに、離婚を認めないのは
不自然であり、離婚を認めた方が良いという考えが台頭し、昭和62年最高裁判所は
判例を変更し、厳格な要件のもと有責配偶者からの離婚請求を認めることとなった。
その要件とは
①夫婦の別居が両当事者の年齢及び同居期間との対比において相当長期に及ぶこと。
(相当長期とは、当初は別居30年とされていたが、次第に短くなる傾向にあり、
22年、16年、10年となり、平成2年最高裁判所の判決では8年で認めている。)
②夫婦の間に未成熟(18歳程度まで)の子が存在しないこと。
(未成熟の子がいる場合でも、離婚が絶対認められないものでもなく、
最高裁判所は、別居期間が14年近くに及び、この間毎月養育費を払ってきたこと、
離婚により経済的給付が期待できるとの理由で、離婚を認めている。)
③相手方配偶者が離婚により精神的、社会的、経済的に極めて過酷な状況に
おかれないこと。
離婚の効果
離婚により、姻族関係は当然に終了する。
その他に、復氏や財産分与という効果が生じる。
復氏 | a)婚姻によって氏を改めた夫又は妻は、協議上の離婚によって 婚姻前の氏に復する。 b)婚姻前の氏に復した夫又は妻は、離婚の日から3ヶ月以内に 戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、 結婚のときに称していた氏を称することができる |
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財産分与 | a)協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を 請求することができる。 b)財産の分与について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議を することが できないときは、当事者は家庭裁判所に対して 協議に代わる処分を請求することができる ただし、離婚の時から2年を経過したときは、この限りでない 上記の場合、家庭裁判所は、当事者双方がその協力によって得た 財産の額その他一切の事情を考慮して、分与させるべきかどうか 並びに分与の額及び方法を定める |
離婚に伴う年金分割について
離婚時の厚生年金の分割制度とは?
離婚時の年金格差を減らすため・・・・
離婚した場合、年金額の多い人から少ない人へ
婚姻期間に応じて年金を分ける制度
・熟年離婚の増加
背景 ⇒ ・男女間の給与の格差
・男女間の雇用の格差
対策 ⇒ ・婚姻期間中であった厚生年金保険料の
納付記録を夫婦間で分割できるようにする
効果 ⇒ ・離婚後の生活不安を軽減
年金の仕組み
3階 | 企業年金等 | サラリーマン等 | 厚生年金基金や職域加算 |
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2階 | 厚生年金保険 共済年金 | サラリーマン 公務員 | 報酬比例 報酬比例 |
1階 | 基礎年金 | 定額部分…全国民共通 |
※分割の対象となる部分は2階の報酬比例部分
3号分割制度(平成20年4月1日から)
平成20年4月以降の第3号被保険者であった期間について
被扶養配偶者として第3号被保険者であった者の請求により、
自動的に2分の1(固定)に分割することができる。
事実婚(内縁)であっても、第3号被保険者であった期間については
取り扱いは同じとなる。
第3号被保険者とは?
昭和61年に、基礎年金制度が導入された際、それまで任意加入
だった、厚生年金もしくは共済年金に加入している被保険者に
扶養されている妻もしくは夫が国民年金の第3号被保険者となった。
健康保険の被扶養者として認定されることで、自動的に
第3号被保険者になる。
第3号被保険者は国民年金の保険料納付義務を負わないが
保険料を納めたことになるため、老齢基礎年金の
年金額の計算の対象となる。
合意による年金分割制度(平成19年4月導入)
離婚に伴う契約公正証書の作成について
①必要書類
⑴当事者(夫・妻)の戸籍謄本(交付の日から3ヶ月以内のもの)
⑵財産分与や慰謝料で不動産や車の名義変更がある場合
・不動産…登記事項証明書、固定資産納税通知書(又は固定資産評価証明書)
・車…車検証
⑶本人確認書類
・運転免許証の場合、公正証書に押す印鑑は認印
・印鑑証明書の場合、公正証書に押す印鑑は実印
⑷協議書内容の原案(メモ)
⑸年金分割がある場合、当事者の年金手帳及び年金分割のための情報通知書
⑹代理人を立てる場合、実印を押した委任状及び印鑑証明書
②作成の手順
⑴必要書類(①の書類)を用意する
⑵公証人と相談の日時を決める
⑶公証人に協議書原案をもとに契約公正証書の作成を依頼
⑷当事者2名が契約公正証書の内容を確認、原本に署名・捺印
・原本は公証役場で保管、正本・謄本を受け取る
・年金分割がある場合は年金分割の部分だけの謄本(抄録謄本)も受け取る
⑸ 交付送達(強制執行をする側は相手側に公正証書の謄本を送達しておく)
(※強制執行は正本でなければできないので、必ず強制執行する方が
正本を受け取る)